
”とにかく今日はそれをお持ちになって、暫く眺めてみられたらどうですか。
もしそれでも難しければまた持ってきて下さればいいから。”
そんな言葉に後押しされて、結局熱海のマンションに持って帰って来る事に。
夜の熱海を背景に、目の前にひと鉢の盆栽があるわけです。
ここで育てられるかって?そりゃ無理ですよ。
どうするかって、ノーアイデアです。
でも、謎が解けなかった。
盆栽屋さんからご連絡頂いた前回、
どうかもう処分して下さい、とお願いはしてあった。
でも帰国が早まったので、”じゃぁ一目見に行こう”と決めたのでした。
なぜって...この話が入ってきたのは、
「ちょうど私が金沢大学医学部大学院の合格発表を受けた日」
だったからです。
まるで亡き親父が合格を祝ってくれるために何かを伝えてきたかの様で。
その盆栽を見て、盆栽屋さんとお話をしたら、
親父が言わんとしていることがわかるかと思いました。
聞けば盆栽屋さんと父とは都内で盆栽展がある度に会っては、
会場を抜け出して半日語り通すほど気が合っていたそうで、
色々な思い出話など伺いました。
盆栽屋さんはとても優しく愉快な方で、世の中の見方も面白く、
当時の父が大喜びで話している姿がありありと目に浮かびました。
父は、普段は買った盆栽をそのまま嬉々として持って帰って来てたのですが、
なぜかその時は、”この幹がまっすぐなのは変だよね”という話になり、
盆栽やさんの、”じゃぁ私流でよければ曲げときましょうか?”との提案に
”そうして下さい”なんて話でいつの間にか20年。
話を聞いているうちに、これはまだ手放しちゃいけないんじゃないか?
という想いが胸の内にむくむくと。
実は父が亡くなる直前に朦朧としながらも、
”盆栽、売っちゃダメだぞ”と言っていたのを思い出したからです。
その時はそれは実家にあった盆栽のことだと思ったので、
わかった、と返事しましたが、
人のいなくなった実家では全ての盆栽は枯れ、
鉢なども全て処分する事になったのです。
もしかして親父はこの盆栽のことを言っていたのか!?
謎は深まります。
なんだろう、これはなんかの謎解き脱出ゲーム系?
そして、目の前にひと鉢の盆栽がある、というわけです。
真柏、人気のある糸魚川の明星岳で山取りしたものから
苗木を作ったものだそうで、盆栽の中の王様です。
これが将来、どんな物語に繋がっていくのか、
今は暫く眺めてその時を待ちたいと思っています。